学歴は保険だ!3
その広告とは自動車メーカーの期間従業員募集であった。
しかも社員雇用有りと。
当時18歳、周囲は大学進学や就職して充実した日々を送っていた。
俺は両親や親族に嫌気がさし15歳で家出、中卒でアングラの世界に飛込み3年が過ぎ、それなりの金を手にしていたが周囲と同じ様な人生に憧れていた。
周囲よりは一歩遅れた人生かも知れないがスケールのデカい土地で、スケールのデカい一流企業で働けるチャンスでは無いかと。
私は決意を固め、地元へ急遽戻った。
そしてケジメを着けて引退した。
関係者の反感は相当だったが年齢が味方をして幸い事は大きくならなかった。
その後地元の面接をクリアし指定の日時に会社へ飛び立った。
到着後は説明と研修を終え、配属先決定と流れ勤務を開始した。
人生で初めて社会保証を手に入れた時でも有った。
その当時は15歳からアングラの世界で生きていたので、税金や年金、国民健康保険等は無知で有った。
寮の自室で一流企業の名前が入った社会保険証を眺めていたら涙が止まらなかった。
期間従業員とは言え、一般社会で社会人になれたんだと。
福利厚生の良さや週休2日制、残業も程々にも関わらず給料の良さにも感動した。
これが一流企業の待遇と生活か。
当時は今と違い契約期間が11ヶ月満期の1ヶ月待機が法律で決まっていた。
安泰した日々で休みは必ず外出した。
今まで青春も無く、産まれてから家族と出掛けた事も無く、アングラの世界で必死で生きて来た私には自分の時間は一切無かった。
観光地を巡りをしたり、スーツばかりで流行の服を買ったり着た事が無かった私は思う存分買物をした。
子供の頃、周囲はゲーム機で新作ゲームを買ってもらい遊び尽くしている姿を指を咥えて見ている悔しい日々だった私が初めてゲーム機を買い遊んだ。
本当に充実していたが遂に満期を迎えた。